Symbol.unscopables
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This feature is well established and works across many devices and browser versions. It’s been available across browsers since September 2015.
Symbol.unscopables
は静的データプロパティで、ウェルノウンシンボルである Symbol.unscopables
を表します。with
文はスコープオブジェクト上で、その with
環境内でバインドから除外されるプロパティの集合を持つプロパティを、このシンボルで検索します。
試してみましょう
値
ウェルノウンシンボル Symbol.unscopables
です。
Symbol.unscopables のプロパティ属性 |
|
---|---|
書込可能 | 不可 |
列挙可能 | 不可 |
設定可能 | 不可 |
解説
[Symbol.unscopables]
シンボル(Symbol.unscopables
でアクセス)は、with
環境バインドでプロパティ名が字句変数として公開されるのを除外するために、任意のオブジェクトに定義することができます。なお、厳格モードでは、with
文は使用できず、このシンボルは必要ありません。
[Symbol.unscopables]
オブジェクトのプロパティを true
(または任意の真値)に設定すると、with
スコープオブジェクトの対応するプロパティをスコープ対象外するため、with
本体スコープに導入されません。プロパティを false
(または偽値)に設定すると、スコープ対象となり、字句スコープ変数として現れます。
x
がスコープ対象外かどうかを判断するとき、[Symbol.unscopables]
プロパティのプロトタイプチェーン全体に対して x
というプロパティを呼び出します。つまり、[Symbol.unscopables]
をプレーンオブジェクトとして宣言した場合、Object.prototype
のプロパティ(例えば toString
など)もスコープ対象外になり、これらのプロパティが通常スコープされていると想定している古いコードでは後方互換性が発生する可能性があるということです(下記の例を参照してください)。独自の [Symbol.unscopables]
プロパティでは、そのプロトタイプとして null
を持つようにすることをお勧めします(例えば Array.prototype[Symbol.unscopables]
がそうなっています)。
このプロトコルは、DOM API (Element.prototype.append()
など)でも利用されています。
例
with 文内のスコープ
次のコードは、ES5 以下であれば正しく動作します。しかし、 ECMAScript 2015 以降では、Array.prototype.values()
メソッドが導入されました。これは、with
環境内で "values" はメソッドになり、with
文の外の変数ではなくなったということです。
var values = [];
with (values) {
// [Symbol.unscopables] が存在しない場合、ECMAScript 2015 から
// 値は Array.prototype.values になります。
// そのため、エラーが発生します。
values.push("something");
}
この with (values)
を含むコードは、Array.prototype.values()
が追加されたとき、Firefox において一部のウェブサイトで不具合が発生しました(Firefox Bug 883914)。さらに、将来配列メソッドが追加された場合、それが暗黙的に with
スコープを変更すると壊れる可能性があることになります。そのため、Array.prototype[Symbol.unscopables]
というシンボルが導入され、Array
に Array.prototype[Symbol.unscopables]
として実装され、いくつかの Array メソッドが with 文にスコープされるのを防ぎます。
オブジェクト内の unscopables
自分のオブジェクトに [Symbol.unscopables]
を設定することもできます。
const obj = {
foo: 1,
bar: 2,
baz: 3,
};
obj[Symbol.unscopables] = {
// オブジェクトに `null` プロトタイプを持たせて、
// `Object.prototype` メソッドがスコープから外れないようにする
__proto__: null,
// `foo` はスコープ対象
foo: false,
// `bar` はスコープ対象外
bar: true,
// `baz` は省略。`undefined` は偽値なので、これもスコープ対象(既定値)
};
with (obj) {
console.log(foo); // 1
console.log(bar); // ReferenceError: bar is not defined
console.log(baz); // 3
}
プロトタイプが null ではないオブジェクトを [Symbol.unscopables]
として使うのは避ける
[Symbol.unscopables]
のプロトタイプを削除せずに、プレーンオブジェクトとして宣言すると、微妙なバグを発生させる可能性があります。[Symbol.unscopables]
の前に動作する次のコードを考えてみましょう。
const character = {
name: "Yoda",
toString: function () {
return "Use with statements, you must not";
},
};
with (character) {
console.log(name + ' says: "' + toString() + '"'); // Yoda says: "Use with statements, you must not"
}
後方互換性を保つために、character
にプロパティを追加するときに [Symbol.unscopables]
プロパティを追加することにしました。ナイーブにこうやるかもしれません。
const character = {
name: "Yoda",
toString: function () {
return "Use with statements, you must not";
},
student: "Luke",
[Symbol.unscopables]: {
// Make `student` unscopable
student: true,
},
};
しかし、上のコードは次のようにすると壊れてしまいます。
with (character) {
console.log(name + ' says: "' + toString() + '"'); // Yoda says: "[object Undefined]"
}
これは character[Symbol.unscopables].toString
を探すと、真値である Object.prototype.toString()
を返しているため、with()
文の中の toString()
呼び出しを、globalThis.toString()
を参照させるためです。また、this
なしで呼び出されているため、this
は undefined
であり、[object Undefined]
を返しています。
このメソッドが character
でオーバーライドされていない場合でも、これをスコープ不能にすることで this
の値が変更されます。
const proto = {};
const obj = { __proto__: proto };
with (proto) {
console.log(isPrototypeOf(obj)); // true; `isPrototypeOf` がスコープされ `this` は `proto` になる
}
proto[Symbol.unscopables] = {};
with (proto) {
console.log(isPrototypeOf(obj)); // TypeError: Cannot convert undefined or null to object
// `isPrototypeOf` はスコープされず `this` は undefined になる
}
これを修正するには、常に [Symbol.unscopables]
が、Object.prototype
プロパティを含まない、スコープ対象外にしたいプロパティのみを持つするようにしてください。
const character = {
name: "Yoda",
toString: function () {
return "Use with statements, you must not";
},
student: "Luke",
[Symbol.unscopables]: {
// オブジェクトに `null` プロトタイプを持たせて、
// `Object.prototype` メソッドがスコープから外れないようにする
__proto__: null,
// `student` をスコープ対象外にする
student: true,
},
};
仕様書
Specification |
---|
ECMAScript Language Specification # sec-symbol.unscopables |
ブラウザーの互換性
BCD tables only load in the browser